ヨーロッパ・ジャズの雄大なサウンドと歌唱力・表現力共に実力No.1のキャロル山崎がコラボした聴き応えある作品。日本でもイタリアでも現在人気No.1トランペッターのファブリツィオ・ボッソが3曲 ゲスト参加。
アレッサンドロ・ブラーボ(P)
ステファノ・カンタラーノ(B)
アレッサンドロ・マールツィ(Ds)
ファブリツィオ・ボッソ(Tp&Flgh)
マウリツィオ・ジャンマルコ(Sax)
クリスティアーナ・ポレグリ(Sax)
エンリコ・ブラッコ(G)
収録曲
Liner Notes
キャロルがローマでレコーディングをすると聞いて、これまでとは違う一面を発見できるか期待していたが、みごとにヨーロピアン・ジャズを歌い上げたのには正直驚いた。
これまで、彼女は何回かニューヨークのハーレムに「修行」に出かけていろいろと影響を受けていたようなので、次はブルースかと思っていたのだが、洗練されたヨーロピアン・ジャズをここまでしっくりこなせるのは彼女の中に流れるハンガリー系の血(父)のなせるわざなのかもしれない。
まず選曲が洒落ている。ホレス・シルバーの“ドジャズ”Nica’s Dreamの後にシャルル・アズナブールの代表作Yesterday When I Was Youngが続いたり、スタンダードでもちょっとひねったSo Many StarsやWednesday’s Child, Time After Timeを歌い、Mood Indigoを8ビート調で紹介した後、「パリのめぐり逢い」のテーマのLive For Lifeで締めくくるというように、聴くものに「ほほう」と言わせるところが憎い。
湘南ビーチFMでジャズ番組のDJをしていることで、このセンスをいつの間にか身につけてしまったのだろうかとも考えてみた。それらを、キャロルは「自分のもの」として歌っているのだ。
前のアルバム「Dream」のライナーノーツにも書いたが、彼女のボーカルは、多くの日本のシンガーが有名な歌手の影響(あえて真似とは言わないが)を受けている中で、あくまで自分なりに解釈して歌っているところを私は高く評価している。今回のアルバムでも、例えばYesterday When I Was Youngはシャーリー・バッシーの十八番だが、その影をまったく感じさせない。
またThe World We Knew, Over And Overといえばフランク・シナトラの持ち歌だが、そのことを忘れさせるほどキャロルの歌にはオリジナル性がある。あえて言えば「キャロル節」のようなものが生まれたようにも思えるのだ。それにはレコーディングに参加したミュージシャンの影響も大きかったのではないか。ファブリツィオ・ボッソがゲスト出演したことで、ボーカルに求められるレベルも半端なものでは済まなくなったはずだ。
他もクラシック畑の育ちで音楽的にも感性の鋭い面々のようだし、ほとんどの曲をつきあったピアノのアレッサンドロ・ブラーボはアレンジャーとしても腕を振るっているようで、キャロルには強い味方だっただろう。レベルの高いイタリアのジャズマン達とのコラボレーションで、キャロルは間違いなく新境地を切り開いたようだ。
木村太郎